［望夢楼］／［幻想諸島航海記］／［中ノ鳥島（その２）］／［付録］
==========〔作成：内閣〕
内務大臣請議無人島名稱竝所属ニ關
スル件
右謹テ奏ス
明治四十一年七月二十二日
内閣總理大臣侯爵桂 太郎〔花押〕
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〔一頁空白〕
==========〔作成：法制局〕
〔付箋〕
本件ハ此儘進行ノ事ニ
主務省ト協議濟〔印＝法制局〕
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〔欄外〕内甲一三四
明治四十一年七月十八日
内閣總理大臣〔花押〕 法制局長官〔印〕
外務大臣〔花押〕 大蔵大臣 海軍大臣〔花押〕 文部大臣〔花押〕 逓信大臣〔花押〕
内務大臣〔花押〕 陸軍大臣〔花押〕 司法大臣〔花押〕 農商務大臣〔花押〕
別紙内務大臣請議無人島名稱并所属
ニ關スル件ヲ審査スルニ右ハ東京市
小石川區諏訪町山田禎三郎ナル者北
緯三十度五分東經百五十四度二分即
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チ東京府小笠原島ヲ距ル五百六十哩
ノ位置ニ於テ一島嶼ヲ發見シ海圖ノ
「ガンジスアイランド」ニ相當スル旨屆
出タルニ依リ行政上ノ所属ヲ定メラ
レンコトヲ東京府知事ヨリ上申セリ
然ルニ水路部ニ於ケル日本水路誌ニ
ハ北緯三〇度四七分東經一五四度一
五分ニガンヂス島アリ位置疑ハシト
ノ符號ヲ置ケル趣ニテ其ノ位置ニハ多
少ノ差異アルニ依リ他日確定スルノ
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必要アルヘキモ帝國ノ版圖ニ属スヘ
キハ論ナキヲ以テ自今該島ヲ中ノ鳥島
ト名ケ東京府小笠原島廳ノ所管ト爲
サムトスト云フニ在リ
案スルニ發見ニ係ル島嶼ハ小笠原群
島其ノ他我版圖ニ属スル島嶼ヲ距ル
コト甚タ遠ク且ツ其ノ位置ニ付之ヲ
判定スルモ當然我版圖ニ属スヘキモ
ノト爲スハ其ノ理由乏シキカ如シ然
レトモ本島ニ關シテハ別紙海軍水路
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部長ノ囘答書ニ在ルカ如ク從來其ノ
位置及存否スラ確定セサルモノニシ
テ勿論他國ニ於テ之ヲ占領シタリト
認ムヘキ事實ナク帝國臣民山田禎三
郎之ヲ發見シ實地蹈査ノ上別紙發見
屆ヲ提出シ猶同島ニ於テ燐礦採掘補
鳥事業ヲ營マントスルモノナルニ於
テハ之ヲ以テ國際法上占領ノ事實ト
認メ該島ヲ本邦所属トシ可然仍テ結
局請議ノ通リ閣議決定セラレ可然ト
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認ム
指令案
無人島名稱竝所屬ニ關スル件請
議ノ通
明治四十一年七月廿三日〔印＝山田〕〔この行は後からの書き加えと思われる〕
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〔この間、参考資料として南鳥島・鳥島の所属問題に関する資料が挿入されているが、省略〕
==========〔作成：内務省〕
〔欄外〕法制局内第七二号 七月二日
内務省東甲第二五九{号乕}
無人島名稱并所屬ニ関
スル件
東京市小石川區諏訪町山田
禎三郎ナル者北緯三十度五
分東經百五十四度二分即チ
東京府小笠原島ヲ距ル五百
六十哩ノ位置ニ置テ島嶼ヲ
発見シ海圖ノ「_ガンジスアイランド_」ニ相
當スル旨屆出タルニ依リ行
政上ノ所屬ヲ定メラレンコ
トヲ東京府知事ヨリ上申セ
リ然ルニ水路部ニ於ケル日
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本水路誌ニハ北緯三〇度四
七分東經一五四度一五分ニ
ガンヂス島アリ位置疑ハシトノ
符号ヲ於ケル趣ニテ其位置
ニハ多少ノ差異アルニ依リ
他日確定スルノ必要アルベ
キモ帝國ノ版圖ニ屬スヘキ
ハ論ナキヲ以テ自今該島ヲ
中ノ鳥島ト名ケ東京府小笠原
島廳ノ所管ト為サントス
右閣議ヲ請フ
明治四十一年七月一日
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内務大臣 原 敬〔印〕
内閣総理大臣侯爵西園寺公望殿
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〔一頁空白〕
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申展甲第一六一七{号乕}ノ三
新島嶼ノ行政區劃ニ関シ上申
客月四日申展甲第一六一七号二ヲ以テ山田禎
三郎ノ屆出ニ係ル新島嶼ニ関シ及上申候處
同島嶼ニ於テハ燐礦採掘ノ見込有之同人ヨリ
東京鑛山監督署ヘ出願シタル義モ有之候
趣ニテ同署ヨリ小笠原島々廳ヘ故障ノ有
無照會有之候ノミナラス捕鳥事業モ亦
有望ナル中ニテ全島拝借捕鳥許可ノ
義同島廳ヘ出願シタル事実有之候ニ付至
急行政區劃御指定相成候様致度此
段及上申候也
明治四十一年六月十一日
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東京府知事阿部 浩
内務大臣原 敬殿
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小笠原島所属島嶼發見届
拙者儀明治四十年八月中北緯三十度五分
東経百五十四度二分ノ所ニ於テ一島嶼ヲ探
検シ其面積地質等左記諸項ノ如クニシテ
當然小笠原島所属ニ属スヘキモノナルヲ発見致
候間概測圖面相添ヘ此段御届申上候也
一該島ハ小笠原島ヲ距ル五百六十哩ニシテ全島
周囲一里廿五町ナリ
二島内全面積六十四万三千七百坪
三地積八分通リ迄燐礦堆積シ其厚サハ平均六
尺位ニシテ之ニ含有セル燐酸石灰ハ二十パーセント
乃至二十五パーセントナリ
四樹木ハ_タコ_ノ樹一坪平均一本位アリ稀ニ_カヤ_樹
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ヲ見ル飲用水ノ自然ニ湧出スルモノナシ
五鳥類ハ馬鹿鳥（白黒）一見数百万羽ヲ算ス
六該島ハ海圖ニ於ケルガンジスアイランド(GANGES・I.)
ニ相當スト思惟ス
七探検ノ上別紙圖面ノ如ク島内ヲ三分シ仮ニ小
字ヲ日向平、真鳥山及西向平ト命名セリ
船付場所ハ西向平ニシテ之ヲ西港ト仮称セリ
右
明治四十一年四月廿八日
東京市小石川区諏訪町二十番地
発見者 山田禎三郎
東京府小笠原島々司阿利孝太郎殿
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〔地図〕
発見島嶼地図尺度六千分ノ一
東京府小笠原島属島（海図Gangesト記セル一島ニ相当ス）
小字日向平
仝 真鳥山 総坪数六十四万参千七百坪
仝 西向平 北緯三十度、東経百五十四度
小笠原島ヲ距ル五百六十哩
明治四十一年四月廿八日付届
東京府小石川区諏訪町二十番地
発見者山田禎三郎
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水第四七三{号乕}
明治四十一年五月二十一日
水路部長坂本［一郎］
内務省地方局長床次竹次郎殿
囘答
本月十三日内務省東甲第二五九{号乕}ヲ以テ御
依頼ノ件了承右發見ノ島ニ就キテハ當部
ニ於テモ何等ノ徴證スヘキ書類無之従テ其名
称面積形状ニ関シテ取調ヘノ途無之候得共其
位置ヨリ推究セリ發見届書ニ記載セル如ク_ガンヂス_
島ナラント被存候尚此_ガンヂス_島ニ関シテハ別紙通
リノ記事有之而已ニ候間御参照マテ相添申候
追テ島嶼發見届及返戻候
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右回答ス
（別紙貳義〓時〔？〕） （終）
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（一）千九百年英国水路部出版太平洋諸
島水路誌
第一巻四五一頁ニ掲記セル飜譯
_ガンヂス_島及礁
海図上_ガンヂス_島ハ北緯三〇度四七分東経一五
四度一五分ニ_ガンヂス_礁ハ北緯三一度五分東経
一五四度一六分ニアリ從来此近傍ニ一個若シ
クハ多数ノ危険アリト屡報告セラレタリト雖モ其ノ
正位置ニ就キテハ一モ確實ナルモノナシ
此附近ニ或危険礁ノ存在スルコトハ事実ナリトノ
報告屡至レリ從テ其存否ヲ確定スルコト必要ナリ
（二）千八百八十年米国水路部出版北太平
洋危険報告追補一七頁ニ掲記セル飜譯
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太平洋{シ氣}船ノ船長ハ屡此附近ヲ航行セシカ
北緯三一度八分東経百五十四度二〇分ニ於ケル
礁（或ハ北緯三一度三分東経一五四度八分ニアリト云フ）
及北緯三十一度東経百五十四度四十五分ニ於ケル
_ガンヂス_島等ハ存在セザルコトヲ報告セリ
然レトモ此地方ハ他日ノ検測ヲ要ス
（三）明治三十一年當部編修小笠原群
島ヘ出張ノ際同島ニ於テ聴取セシ覺書
曩ニ玉置半右エ門ナルモノ一島ヲ發見開拓シ
巨萬ノ財ヲ蓄フルニ至リタルヲ以テ同島ノ有志者
當時海図上ニ記載セラレタル_ガンヂス_島（位置
疑ハシト附記ニアリ）ヲ探検セント之カ捜索ニ從
事セシモ発見スルコト能ハザリシト如上ノ事實
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ヲ綜合シ現今、日本水路誌第一巻三四四
頁ニハ左記ノ如ク掲記セリ
_ガンヂス_島及礁(ganges island reef)
北緯三〇度四七分東経一五四度一五分ニ_ガンヂス_
島アリ又北緯三一度五分東経一五四度一六分
ニ一礁アリ是等ノ危険ハ往時ヨリ屡ハ之ヲ認
メタリトノ報告アリト雖トモ小笠原島人ハ曽テ数回
之ノ探検ニ従事シタルモ遂ニ之ヲ認メタルコトナシ
ト云ヘリ海図上ニハP.D.（位置疑ハシ）符ヲ置クト
雖モ其實有無未定ナルカ如シ航海者ハ宜シク
警戒スベシ （終）
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