［望夢楼］／［謎の疑似科学世界］／［神々の疑問・番外編］
望夢楼「えー、『神々の疑問』の更新が遅れておりまして申し訳ありません。1997年4月までにはなんとか全体を書き上げようと思っていますので、気長に待っていて下さい。だけどそれまで『神々の指紋』の人気は持つんだろうか……？」
謎の助手・Ｍ「十分持つんじゃないの？ コミック版も出たし。便乗本もうじゃうじゃ出てるし。」
望「うーん。それはそれでまた困ったもんだが……。しかしコミック版ってどんな内容なんだろう。まだ見てないけど。」
Ｍ「ところでさ。『神々の疑問』でも取り上げられている批判本・『「神々の指紋」の超真相』（データハウス 1996）って……あたしも読んでみたんだけど。」
望「ん？ それで？」
Ｍ「うーん。なんというのかなぁ。批判自体は物凄く適切、的確なんだけど、どうも文章の方がねぇ。ハンコック氏をしきりに揶揄してて……あれが、なんだ
かなぁ……。」
望「うん。確かに、ハンコック氏に悪意を持っている人以外には愉快ではないかもしれないね。正攻法じゃない。
だけどさ。トンデモな説を批判するのに、真っ向から攻めても、あまり評価されないし、人気もあまり出ないだろ。笑い物にするとかいった形で、搦め手から攻めるのも時には必要だと思うよ。まあ、いささか卑怯な手かもしれないけど。」
Ｍ「望夢楼くんはハンコック氏に悪意を持っているわけだから、結構愉快に読めたんじゃないの？」
望「な、何をぬかす。ば、莫迦を言うなっ！ そりゃぼくは『神々の指紋』の批判をやってるけど、これは誤りを正してあげているのであって、悪意を持って
やってるわけでは……。」
Ｍ「ほー。この間『なんでこんな程度のしょーもない本が売れるんだっ、俺ならもっと巧く書いてやるっ！』などとわめき散らしてたのはどこの誰だ？」
望「……そうそう。正月（１月３日）にＴＢＳ系で放送した『神々の指紋』特番見た？ いやー、大傑作だったよね、あれは。」
Ｍ「……話をそらすなっ。」
望（無視する）「最初に、ヒトラー南極脱出説なんてものが出てきたんでまず大爆笑。ま、『神々の指紋』の内容が、もっともらしいナレーションと映像、それにハンコック氏の自信たっぷりな語りによって忠実に再現される、ってのはよくあるパターンだけどさ。そこにゲストの吉村作治教授がすかさずツッコミを入れるし、大槻ケンヂさんや糸井重里さんなど、他のゲストもハンコック説の怪しい点や矛盾点を次々と指摘するし。司会の上岡龍太郎さんまでツッコミ入れ出す始末。しまいにゃ『神々の指紋』の紹介番組なのか、『神々の指紋』批判番組なのかなんなのかさっぱりわからなくなってた。制作者はゲストの人選間違ったんじゃないのか？ とっくに嘘がバレバレになっているのに、用意された映像の通りに強引に話を進めた、もう一人の司会の田丸美寿々さんの姿にはある種の感動さえ覚えたね。しかも、最後に田丸さんがお馴染みの『人間は環境破壊をし過ぎている、これは警告かもしれない、もう一回生活を改めて……』というパターンでしめくくろうとすると、大槻さんが『子供の頃からこういう番組見てるけど、全部この手の終わりじゃないか。やめましょ』ととどめを刺すし。
『神々の指紋』を信じていた人には結構辛い番組だったかもしれないな。みんながみんな、あの番組のように『神々の指紋』をトンデモ本として楽しんでくれているのなら、ぼくもこんな批判文なんか書く必要はないんだけどね。」
Ｍ「でもさ、吉村教授は定説に疑いを持ち、批判することも大切だ、とも言ってたんじゃなかったっけ？」
望「あ、そりゃ大切だよ。」
Ｍ「え？」
望「隙あらば定説を覆そうとするのがまっとうな学問というものじゃないか。学問ってのは定説に挑戦することによって進歩してきたんじゃないのかい。
だけどさ。『学界の定説への挑戦』と格好つけといて、その内容が、実は何十年も前からある説で、トンデモ業界では『定説』のようになっていて、批判も山のように出ていて、ちょっと調べれば間違いとすぐ判る、そんな程度の説を無批判に持ってくるってのは、そりゃ、『定説への挑戦』とか学問とかいった以前の問題だよ。しかも、往々にしてそうした説を支持する人は、『学界の定説』がどんな根拠で成り立っているのか、どのくらいきちんと検証されているのか、ちっとも調べてないんだから。いったい、ドグマティックなのはどっちなのかなぁ。」
Ｍ「うーん……なるほど。」
望「近現代史でもこの手の行為を堂々とやってくれる人がいるんだよね。敢えてどこの誰とは言わんけど、驚くべき無知と無神経と不勉強さで『定説』を覆そ
うとする人が。」
Ｍ「それって、歴史学に限った話じゃないでしょ。自然科学でもその手の人は結構いるよね。……あと、『夢』とか『ロマン』とかいう言葉使って弁護する人もいるけど、あれはどう思う？」
望「『夢』とか『ロマン』とか言うんだったら、トンデモ業界の『定説』を持ち出すのは止めてほしいね。発想が貧困だよ、それじゃ。もっと想像力あふれるものにしてほしい。」
Ｍ「そーきたか……。」
望「それにしても、あの番組によれば、ハンコック氏は現在火星のピラミッドとスフィンクスについて調べているっていうけど……止したほーがいいと思うぞハンコック。無謀だハンコック。信用なくすぞハンコック。それより自説にあれだけ自信があるのなら、印税で南極を発掘してくれハンコック。」
Ｍ「……結局、揶揄してるんじゃないの。」
望「……あ……。」
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